LP/EP MURS 3:16 - THE 9TH EDITION : THE END OF THE BEGINNING
RULES THE WORLD : GOOD MUSIC : F'REAL : COMURSHUL



MURS 3:16 - THE 9TH EDITION

Label: DEFINITIVE JUX (2004)

Artist: MURS

Production: 9th Wonder


1. Intro
2. Bad Man!
3. 3:16
4. The Pain
5. Trevor An' Them
6. Freak These Tales
7. H-U-S-T-L-E
8. Walk Like A Man
9. And This Is For...
10. The Animal w/Phonte
MURSのDEF JUX第2作目。LITTLE BROTHERの9TH WONDERが全曲プロデュース。

MURSの新作とはいえ、注目すべきはやはり9TH WONDERのトラックという事になろう。ルーズなジャズ・ループに、ソウル・ヴォーカル・サンプル、ボトムの強調されたドラムス。間違っても革新的な音じゃないが、MURSの人間臭いライムに最高のバックグラウンドを提供。正に期待通りだ。プロダクションを彼一人に任せた事がこのアルバムを傑作にしていて、統一感の薄かった前作とはうって変わって首尾一貫したトーンが貫かれていて心強い。9TH WONDERの人肌のような暖かいサウンドに、人間性が滲み出るMURSのライムが乗る訳だから悪い訳がないというものだ。

MURSに関しては、あまり言う事がない。MURSはいつもドープだし、だからこそ、その後ろで鳴ってる音が作品の出来を左右する。今回も、女ネタ一つとっても、"BAD MAN!"では「最初からファックしたかったんだよ」とうそぶいてみたり、"THE PAIN"のようにシットリと失恋の痛みを語ってみたりと、相変わらず饒舌だ。親友の死と復讐を描く"WALK LIKE A MAN"は映画ボーイズ・イン・ザ・フッドを思い起こさせるし、"AND THIS IS FOR..."は、人種とヒップホップに関するサード・ヴァースがとにかく秀逸。俺の音楽は人種を超えてアピールするが、ヒップホップがロックやジャズと同じような末路を辿るのなんて見たくない、とヒップホップがブラック・ミュージックである事を改めて宣言している。

これまでとにかく多くのビートメイカーと曲を作ってきたMURSだが、9TH WONDERはベスト3に入る相性の良さ。全体のまとまりも素晴らしいし、ここ2〜3年のMURS作品の中では最も楽しめるアルバムなんじゃないかな。




THE END OF THE BEGINNING

Label: DEFINITIVE JUX (2003)

Artist: MURS

Production: El-P, Blockhead, Ant, Rjd2, Oh No, Tate The Example, Mr. Dibbs, Belief, Jizzm High Definition, Patchworks, Shock G, Mum's The Word, Sunspot Jonz


1. You And I
2. Dibbs Did This Shit (interlude)
3. What Do You Know?
4. The Scuffle
5. The Night Before
6. Transitions Az A Rider
7. Happy Pillz w/Aesop Rock
8. Risky Business w/Shock G & Humpty Hump
9. The Dance w/El-P
10. God's Work
11. Def Cover
12. Please Leave
13. Sore Losers
14. B.T.$.
15. 18/w A Bullet Remix
16. Brotherly Love
17. Got Damned?
18. Done Deal w/3MG
LIVING LEGENDS、RHYMESAYERS、DEF JUXという、今のアメリカで最も影響力のある3つのクルーの橋渡しをしつつ、それらのサウンドを分かりやすい形で提示するなんて、正にMURSにうってつけだ。”SLUGなら”と言われそうだが、MURSは、例えば2 PACなんかが好きなリスナーにもアピールするし、EL-PやELIGHにはない分かりやすさと親しみやすさがある。

ファンへの感謝の気持ちだとか音楽にまつわる政治への憤りなどを正直に吐露する"YOU AND I"や"GOT DAMNED?"辺りには、更にファン層を広げたいと言う願望がありつつも、そうする事でファンとの関係性が変化してしまう事への寂しさのようなモノが滲み出ている。ここまで正直に自らの思いをリスナーに告白したMCなんて、殆どいないよね。ドープ!

それ以外では、ギャングでなくとも常に身の危険が付きまとうL.A.のストリートの実情を描く"THE NIGHT BEFORE"、ヒップホップ史上あまり類を見ないスケーター・アンセム"TRANSITIONZ AZ A RIDAH"、労働賛歌"GOD'S WORK"、金の使い道に悩む"B.T.$."などなど、トピックには事欠かない。ユーモアって意味では、AESOP ROCKとの与太話"HAPPY PILLS"は最高だし、DIGITAL UNDERGROUNDのSHOCK G & HUMPTY HUMPが参加した"RISKY BUSINESS"なんて、好き者には堪らない出来だ。

ビートでは、やっぱりDEF JUX勢との共演が目玉となるのだろうが、どれも引き気味でマジックはない(EL-Pの"DEF COVER"は、彼のキャリアでも最低のレベルだろう)。それよりも、ANTやBLOCKHEADとの相性の良さや、ソウルフルなネタ使いや堅くへヴィーなドラムが素晴らしい、アルバムのキーとなるトラックを手掛けたBELIEFの特筆すべき仕事振りなどを聴くにつれ、MURSにはこうした泥臭い暖かみのあるトラックがやはり最高に似合うと再確認。BELIEFによる3曲"WHAT DO YOU KNOW?"、"GOD'S WORK"、"BROTHERLY LOVE"はとにかく最高で、彼には今後注目が集まる事間違いなし。MUM'S THE WORDも、アルバムの締めくくりに素晴らしいトラックを提供している。スムース!

前作"MURS RULES THE WORLD"が、統一感はあるが楽曲の質が低かったのと対照的に、この"THE END OF THE BEGINING"はそれぞれの楽曲の良さが光っている。それに、様々なタイプのビートのお陰で、今までのアルバムの中で最も取っ付き易いアルバムなんじゃないかと思う。それがMURSの狙いだったろうし、そういう意味では、大成功と言って良い。




RULES THE WORLD

Label: MARY JOY/VERITECH (2000)

Artist: MURS

Production: Mums The Word, Diverse, Javier Mosley, Gandalf


1. Track 1
2. Track 2
3. Track 3
4. Track 4
5. Track 5
6. Track 6
7. Track 7 (interlude)
8. Track 8
9. Track 9
10. Track 10
11. Track 11
12. Track 12
13. Track 13
14. Track 14
このアルバムの前代未聞な所は、曲名の欄がブランクになっていて、リスナー自らが曲名を決めて記入する様になっている点だ。何か意図があるのか、曲名を決めるのが面倒くさいだけなのか...。とにかく、MURSだ。これまでも色々なプロデューサーと積極的にコラボレーションしてきた彼、このサード・アルバムではMUM'S THE WORDと大幅に起用している。自分のライム・スタイルに合うビートを模索しているのか?アルバムごとにサウンドをガラリと変える辺りに自信が垣間見れるし、ゲストMCがいない事も、そういった思いを強くしている。

ストリングスがメジャー感を煽る"TRACK 1"での「MURSが世界を制覇する...ただのキャッチーなフレーズじゃない、生き方そのもの/マイクを握れば自信満々」との一節が伊達じゃないのは、知っての通り。MURSがドープなのは、正にリアルだから。とにかくキャッチーな"TRACK 3"の「ナスティに振舞おうとしてる訳じゃない、ただリアルでいるだけ/月曜にはLAWとアリー・マイ・ラヴを見るし」という事。「ナスティに振舞おうとしてる訳じゃない」とは言っても、今までしゃぶってくれた女(特に飲み込むタイミングを分かってる女)に捧げる"TRACK 6"を聴いた後では、説得力を持たないが。ナスティ!かと思えば"TRACK 9"では随分とポジティヴ。そんな所がMURSの最大の魅力で、驚異的なマイク・スキルを別にすれば、彼も普通の人間な訳。そんなMURSのリリカルスキルが最も光っているのが"TRACK 11"。”ラフな男が好き”とのたまう女を殴ったら、余計に興奮させちゃって付きまとわれる話。最高です。実話?

音の面でドープなのは、ラテン風味満載の"TRACK 10"、ダンサブルな"TRACK 3"、アコースティックギターの音色が耳に優しい"TRACK 5"辺りか。"TRACK 12"は、ELIGHによる美しすぎるハープの音色とマイアミベースっぽいドラム・プログラミングが面白い。

わざわざ言う必要もないとは思うが、MURSは相変わらずドープ。だが、MUM'S THE WORDのビートは当たり外れが激しく、MURSのライムを持ち上げるのには少し弱いと思う。前作が完璧に近い完成度だっただけに、ね。次回作はEL-Pとのアルバムという事で、これは期待するなって言う方が無理でしょ。クラシック?




GOOD MUSIC

Label: MARY JOY/VERITECH (1999)

Artist: MURS

Production: Elusive, Thes-One, Eclipse 427, 45 Acp, Eligh, Grouch, Bizarro


1. Whatuptho?
2. Simple
3. 24 hrs. W/A G w/The Lil' Homie Grover
4. Zonin' w/Eclipse 427
5. L.A. Story Pt1 (my little brother is crazy)
6. Never Eat
7. Regrets? w/Sun Ruler, King Sulamon
8. That's Him
9. L.A. Story Pt2 (freestyle/tagbangerlude)
10. Room 3:16
11. Tomorrow
12. On Mystical Way w/Eligh, Bruce Hathcock
13. Chico's Chicken w/Living Legends
14. Off My Chest
15. ?Que Hora Es?
16. Rap Above
17. Angels w/The Grouch
18. 2 Original w/45 Acp
19. L.A. Story Pt3 w/427, T.W.
20. My Story
21. Murs Daywalker Intro
MURS2作目は、LEGENDSの外からTHES-ONEやECLIPSE 427を起用。この選択は、個人的には大成功だったと思う。他のLEGENDS作品にはない魅力を獲得したアルバムであると同時に、MURSの代表作だ。

「ただのグッドミュージックなんだ」と語るイントロ"WHATUPTHO?"に続く、勢いのある"SIMPLE"は軽い肩ならし。冒頭からバトルモード。類稀なストーリーテリング・スキルを披露する"24HRS. W/A G"は、タイトル通り1日の物語。うねるベースに走るドラムも最高だ。ECLIPSE 427がトラックとラップで参加した"ZONIN'"でも、MURS節は絶好調。所謂コンシャス・ラッパーに向けたキツイ一節「MASTER Pの方がよっぽど地域に貢献してるぜ」が個人的にはお気に入り。続く相変わらず強気な"THAT'S HIM"には、ECLIPSE 427の切れのあるスクラッチをフィーチャー。THES-ONE手掛けるファンキーなトラックがやたらドープな"ROOM 3:16"は、何と言ってもドラム!フックのヴォーカルサンプルもドープだし、ELUSIVEによる"ON MYSTICAL WAY"は、美しいホーンと妖しすぎるベースラインのコントラストが面白い。"?QUE HORA ES?"には、再びTHES-ONEが最高にファンキーなドラムを用意。"2 ORIGINAL"の荒々しいドラムもドープだ。

本作と"F'REAL"最も違う所は、バトル中心だった前作に比べ思慮深い曲が多い点。GROUCHが最高のトラックを提供した"ANGELS"では、美しいピアノの音色に負けず劣らず2人の心を打つライムも美しいし、シンプルなピアノループの"RAP ABOVE"では、自分を負け犬と呼んだりと随分自虐的だ。哀愁漂うギターループがMURSの思慮深いリリックを際立たせる"REGRETS?"、人生を顧みる"MY STORY"の抑えたグルーヴも最高に魅力的。ヴァイヴの音色が気持ち良過ぎる"TOMORROW"のポジティヴなライムも、しっとりと染み入る。

L.A.に纏わる3つの物語"L.A. STORY"シリーズの中では、45 ACPによる"PART 1"が特に気に入った。ICE CUBEの声ネタを使いギャング・メンタリティを語るウェストコースト丸出しの"PART 3"も良い。

スキップする曲など一切ない超強力なアルバム。多様性に富んだコンセプトに合わせるかのように、様々なタイプが用意されたトラック。MURSのリリカル・スキル、デリヴァリーは勿論絶好調だ。LIVING LEGENDS関連作でもずば抜けた完成度を誇っている。文字通りのGOOD MUSIC。




F'REAL

(1997)

Artist: MURS

Production: The Grouch, Eclipse 427, Arata, Slur Face, Eyei3, Vector Omega, Gandoff, Elusive


1. 2 Reasons? w/Aesop
2. The 8th Samurai
3. 4 The Record
4. Basik Murs w/Basik
5. Interview w/The Dominant
6. Dominant Freestyle
7. M-3 (anger)
8. Say Anything w/Living Legends
9. The Saint
10. Nine Five
11. The Jerry Maguire Song
12. Morocco Mike
13. Live My Life
14. Nights Like This
15. The Extras w/Big Texas, Evanessence
16. Ease Bac
17. The Sermon
LIVING LEGENDSのMURS、幾つかのカセット作品に続いて、これが正式なデビュー・アルバム。

最強に凶暴なビートが、バトル・モードのMURSとAESOPをアグレッシヴに駆り立てる"2 REASONS"は、このアルバムがどれほどドープかを確信させる、究極のバトル・チューン。"4 THE RECORD"も同様にハードなバトル・ライム。MURSは何故これほど強気なのか?それは、彼が本物のスキルを持っている数少ないMCの一人だから。続くBASIKとのフリースタイル・セッション"BASIKMURS"はその一つの証明に過ぎない。音質の悪さも良い方向に作用していて、"M-3 (ANGER)"には、「ヒップホップはインドア・スポーツじゃない」というMURSの生の魅力がそのまま詰まっている。

"THE SAINT"や"MOROCCO MIKE"では、ストーリーテリングの才能も見せ付ける。特に後者の"MOROCCO MIKE"は、契約に翻弄されるMIKEという名のラッパーの物語で、ラストまで一気に聴かせる。ヒップホップの堕落を嘆く"THE JERRY MAGUIRE SONG"、高校を卒業してからの軌跡をたどる"NINE FIVE"の2曲も加え、MURSは自身のライム・スキルの多様性を披露している。

強烈なバトル・ライムから、フリースタイル・スキル、類稀なストーリーテ・リングの技術まで、真のMCには何が必要かは明確だ。一つの要素に長けているだけでは、耳の肥えたリスナーは納得しない。多様性が求められる訳だ。そして、MURSはその全てを備えたMCとして、このアルバムでそういった半端なMCとの違いをハッキリとさせた。必聴。




COMURSHUL

Label: VERITECH (1996)

Artist: MURS


- GYPSY SIDE 93-95
1. Sunprayed
2. Dire Straits
3. Melancholy Manuscripts

- MARU SIDE 95-96
1. Red Dots
2. Speed Bumps w/PSC, Eligh, Grouch
3. Verse One

今や伝説的なLOG CABINクルーとして、LIVING LEGENDS結成以前から活動を共にしてきたMURS、SCARUB、ELIGH。MURS名義のこのテープには、彼らの初期音源が収められている。当時からこれほどの高水準を誇っていたこうした音源が、もう少し多くの人間の耳に届いていれば、色んな意味でシーンは今とは違った形になっていたのではないか。

GYPSY SIDEは、その名の通りSCARUB、ELIGH、MURSによるユニットTHREE MELANCHOLY GYPSYSが収められている。 ベスト・トラック"SUNPRAYED"では、SCARUBが既に驚異のデリヴァリーを披露、MURSは若さを感じさせるフロウだが、強気なところは相変わらず。コンシャスなSCARUBとアグレッシヴなMURSの対比が面白い"DIRE STRAITS"、ELIGHが非凡な所を聴かせる"MELANCHOLY MANUSCRIPTS"でも、3人のとにかく早いフロウは圧巻だ。ビートも今よりラフでサンプル中心の音作りで、ドープ。

MARU SIDEに移って、へヴィーなビートがドープな"RED DOTS"でのイルなストーリーテリング、ポッセカット"SPEED BUMPS"での終盤のフリースタイルなどは正にMURSの本領発揮といった所。"VERSE ONE"も勿論タイト。

音質が悪い事は言うまでも無いが、そんな事は気にならない。このテープには彼らの原点が収められているし、何よりドープこの上ない。歴史の授業じゃないけど、過去があって今がある訳で、素通りは許されない。