LP/EP I PHANTOM : EMERGENCY RATIONS : ENTERS THE COLOSSUS



I PHANTOM

Label: DEFINITIVE JUX (2002)

Artist: MR. LIF

Production: El-P, Insight, Edan, Fakts One, Nasa


1. Bad Card
2. A Glimpse At The Struggle
3. Return Of The B-Boy
4. Live From The Plantation
5. New Man Theme
6. Handouts
7. Status w/Insight
8. Success w/Aesop Rock
9. Daddy Dearest
10. The Now
11. Friends And Neighbors
12. Iron Helix w/Insight
13. Earthcrusher
14. Post Mortem w/El-P, Jean Grae, Akrobatik
これまでのシングルやEPは結構質にバラツキがあったので聴く前は一抹の不安を覚えたのも事実だが、アルバムを聴き進むにつれ、そんな不安は吹き飛ぶ会心の出来だ。MR. LIF、待ちに待ったデビュー・アルバム。

MR. LIFがVAST AIREから銃を手に入れる"INTRO"から、崩壊後の地球を描く"POST-MORTEM"まで、アルバムでは様々なストーリーが語られる。武装強盗の末、銃弾に倒れる"A GLIMPSE AT THE STRUGGLE"、ヒップホップによって蘇り、そのヒップホップを逆に蘇らせる2部構成の"RETURN OF THE B-BOY"という緊張感溢れる冒頭の2曲から、9時5時仕事のナンセンスさをライムするユーモラスな"LIVE FROM THE PLANTATION"までの流れは完璧だ。個人的なベストは、家族を顧みない父親の視点を語る"SUCCESS"。AESOP ROCKは子供の視点をフックで繰り返す。

アルバムを締めくくるのは黙示録的な2曲、核による世界の滅亡を描いた"EARTHCRUSHER"と、最後の瞬間に向けて4MCが言葉を残す"POST MORTEM"だ。特に"POST MORTEM"では、強力なMCを迎えながらMR. LIFはラスト・ヴァースでこれが誰のアルバムかを思い出させてくれる。

プロダクション面ではEL-Pがほぼ半数を手掛けていて、こちらの期待に見事に応えてくれる。フラットなMR. LIFのデリヴァリーを最大限に活かすドープ・ビーツ満載だ。"SUCCESS"が特に気に入った。オーソドックスなINSIGHT、相変わらずのミドルスクール・フェチ振りを聴かせるEDANらのトラックも、良いアクセント。FAKTS ONEのプロダクションは正直これまで好きではなかったのだが、疾走するドラムがタイトな"FRIENDS AND NEIGHBORS"は悪くない。

個人的には、これまでの音源も収録した集大成的なアルバムになると思っていたのだが、彼にそんな手抜きは全く必要なかったようだ。今までは何故2枚もEPを出したのか少し疑問に思っていたのだが、コンセプト・アルバムと言っても良いこの"I PHANTOM"を聴き終えてみて、少し理解できた気がする。様々なトピック、ドープなビート、貫禄のアルバムだ。




EMERGENCY RATIONS

Label: DEFINITIVE JUX (2002)

Artist: MR LIF

Production: Mr Lif, Edan, Fakts One, El-P, Dj Hype


1. Intro (missing person's file) w/Akrobatik, Brotha PC
2. Jugular Vein
3. Heavy Artillery
4. Home Of The Brave
5. Pull Out Your Cut
6. Get Wise '91 w/Edan
7. The Unorthodox
8. Phantom w/El-P
ボストン代表、DEF JUXヴェテランMR LIFのセカンドEP。

"JUGULAR VEIN"や"HEAVY ARTILLERY"、"THE UNORTHODOX"ではタイトなバトル・ライムを聴かせてくれるが、リリック的な聴き所は"HOME OF THE BRAVE"だろう。政府に物申すと言った感じのコンシャスな内容で、セカンド・ヴァースはテロ戦争に対するLIFの憤りに満ちている。「反戦の声が上がると、政府には民衆の気をそらすモノが必要になった/それが炭素菌/.../戦争を始めるには最適の場所/前から欲しがってた石油が手に入るからな/ロシアを追い出すために、タリバンに武器を/だが北部同盟との内戦で石油どころじゃなくなった/ここで、教科書に載ってない教訓を一つ/アメリカの金に手を出す奴は、殺られる運命」、対テロ戦争の裏にある、米政府が戦争をしたがる真の理由に触れていて、LIFの真骨頂。

さて、以前からMR LIFの作品を聴く度に思っていたのだが、このEPも同様だった。つまり、プロダクションが弱すぎる、という事。LIF自身が手掛けた"HOME OF THE BRAVE"や"JUGULAR VEIN"は聴くに堪えないし、FAKTS ONEによるシンプルな"THE UNORTHODOX"はそれ程悪くはないが、それ以上でもそれ以下でもない。そんな中良い仕事をしているのは、やはりEDANとEL-P。"HEAVY ARTILLERY"と"GET WILD '91"でミドルスクール調のタフなドラムを聴かせるEDANのトラックは、LIFと抜群の相性だ。自らもフックで登場するEL-Pは、その"PHANTOM"でいつもながらのデジタル・ビート。イル。

彼のデビュー・フル・アルバムでの最大の課題は、LIFのライム/フロウを持ち上げるだけの力強いプロダクションを揃えられるか、という点に尽きると思う。これまでの作品でも、EDAN、EL-P、INSIGHTなどとは抜群の相性を聴かせてくれただけに、今作のようなアヴェレージかそれ以下の曲は非常に勿体無い。LIFが優れたMCだけに、その思いは尚更だ。




ENTERS THE COLOSSUS

Label: DEF JUX (2000)

Artist: MR LIF

Production: Mr Lif, Fakts One, Insight, PAwl, EL-P


1. Datablend
2. Cro-Magnon w/Illin P
3. Pulse Cannon w/Insight, T Ruckus
4. Enters the Colossus
5. Avengers w/Akrobatik
6. Front On This
7. Arise
ESOTERICとVIRTUOSOとのグループ、REBEL ALLIANCEでシーンに登場したMR LIF。ボストンで活動する彼らの中でも、MR LIFは知的なライムとイルなフロウで最も注目されているMCだ。そのボストンのレーベルBRICKからのシングルを経て、以前からライヴなどで交流のあったCOMPANY FLOWのEL P主催のレーベルDEF JUXに参戦。期待の高まるアルバムを前にEPを発表。

MR LIF自身がトラックを手掛ける"DATEBLEND"だが、マイク・スキルとは反対にトラックに関しては非凡な才能は持ち合わせてないようで、正直退屈なビート。MR LIF程のMCでなかったら最後まで聴けないだろう。ここでは強烈なバトル・ライムを披露、そのライムと最後のスクラッチが曲を救っている。ラガDJ、ILLIN Pとのコンビネイションもバッチリな"CRO-MAGNON"は、FAKTS ONEの跳ねたトラックがドープで、一安心。INSIGHTによる電子ビートがドープな"PULSE CANNON"には、そのINSIGHTとSCUMことT RUKUSがマイクで参加。ガナリ声のINSIGHT、落ち着いたMR LIF、T RUKUSとの対比が良い。ワックMC達との戦いをライムしたストーリー物"ENTERS THE COLOSSUS"はまるでアクション映画の様な描写がドープで、ビデオが見てみたい感じ。続く、AKROBATIKのアグレッシヴなフロウで始まる"AVENGERS"を聞いて感じたのは、MR LIFはアグレッシヴなMCとの相性がすこぶる良い事だ。"FRONT ON THIS"は、いかんせんビートが酷すぎるが、"ARISE"は、文句なしのクラシック。EL-Pによる妖しいビートがただドープで、途切れないMR LIFの知的なライムとの相性も抜群、混沌としたビートの隙間に淡々と言葉を埋めてゆく。物質主義、自然破壊などを批判、豊富なヴォキャブラリーに知的さが伺える。この後、ボストン・シーンに捧げたシークレット・トラックが。

トラック的に特筆すべき点が無いのが残念だが、MR LIFの実力の程は充分に堪能できるEPである。EL P、INSIGHTがそれぞれ手掛けるという2枚のアルバムを控えてるという事で、そっちはサウンド面での問題は無いだろう。新たなクラシックが生まれる日は近い。