| 微熱王子 |
ANTICONやDEF JUXのクラシック連発劇はアンダーグランドへの関心を一挙に集めた原動力になりましたね。
ANTICONの実験性や姿勢についても言えることだけど、特にアンダーグランドの理知的な面を持ち上げて、権威が高まっていて。でも、そこが重要で、例えばヒップホップで必ずといっていいほど嫌われるマッチョイズム、あからさまな不良性を回避した、日本の学生がなんとなく親近感を持てるナードイズムがシーンの中に於いて重要なファクターになった。 また本筋から外れてしまうことかもしれませんが、丁度FUMA75さんがネットにPUT EM ON THE MAPを公開したのもこの辺だったと記憶しているんですけど、やっぱり私はこの時期のヒップホップの基盤になっていたのはインターネットとCD-Rだと思っていて、例えばその情報の広がりや早さがシーンに多大な影響を与えていた時期だと思うんですけど、その中で単純に聞きたいのが、FUMA75さんがHPを公開する動機ってなんだったんでしょうか? |
| FUMA75 |
その辺のインテリ感、反マッチョイズムみたいなものは、丁度90年前後のNATIVE TONGUE一派が登場した頃と印象が被るんですよね。当時と今とではヒップホップを取り巻く環境が激変しているので単純な比較は無意味なんですけど、根底にあるヒップホップのカウンター・カルチャーとしての本能のようなモノは同じだと思うんですよ。マッチョに支配されたメインストリームに対するカウンターとしてこうした動きが顕著になるのはヒップホップの常なのかもしれません。 私がサイトを立ち上げたのは2001年ですね。こういう音楽を伝えるサイトが日本になかったからという、至って単純な動機からです。私がネットを始めたのが99年頃なんですが、それから2000年までの一年間ぐらいに、今まで話題に上がったようなアーティストが次々と登場してきたんですよ。でも、日本では雑誌への露出も殆どなく、まとめて伝えるようなサイトもなかった。これだけ素晴らしいアーティスト達がいるのに埋もれていくのは勿体無いと思ったので、自分で始めようと思ったんです。自分が海外のサイトで彼らを発掘したのと同じように、私のサイトで新たな発見をしてもらえたらな、と。最初は、海外の情報サイトや掲示板で拾ってきたニュースや、レビューだけだったんですけどね。お店にまで発展するとは思ってもいませんでしたし、ネットとヒップホップの関係性なんて考えた事もありませんでした。 |
| 微熱王子 |
FUMA75さんがSHOPを開いた頃を思い返すと、ネットから発せられる情報と日本で手に入れられる品物の需要と供給のバランスが著しく悪かったです。今でも覚えているのが、FUMA75さんの「海外通販出来ない人で、僕がサイトでショップを開いたら買う人いますか?」っていうBBSの問いかけ。なんてボランティア精神溢れている人なんだ、と。感動しましたね。私は、せいぜいWE NODとHHIを利用してたくらい。たまにどうしようもなく欲しくて、どこにも売ってない品物とかは怪しげな海外通販サイトで買ってましたけど。HHIでもあったけど、PUT EM ON THE MAPで試聴できて、レビューが見れるってのは凄く参考になりました。FUMA75さんが7点以上つけているものは試聴して、9点以上つけているものは買い、みたいな。 海外インディーは、スピード面でも、量の面でも雑誌媒体は弱かったので、どうしても相対的に見て、ネットの方が強くなるはずなんですよ。その中で、寧ろあの時期には、もっと色んなサイトや有益な情報が日本で広がっても良かったんじゃないか、とは今になって思いますね。HHI JAPANみたいな。 個人的には、アンダーグランドヒップホップにおける日本の「限界」みたいなものはその辺に感じますね。別に悪い意味で言うわけじゃないけど、リスナーが冷めてるというか。その点、PUT EM ON THE MAPは物凄く重要だと思います。 |
| FUMA75 |
そうですね。日本でも、2000年の時点でSIXTOOやBUCK 65、MOKA ONLYのインタビューなど、カナダ・シーンをピックアップした"CLUE"のような素晴らしい雑誌もあったんですけどね。ただ、雑誌という媒体だとやはり敷居が高いというか、お金もかかるし手間暇もかかりますから、こうした音楽をサポートするにはネットが最適ですよね。 インディペンデントと一言で言っても、それこそANTICONやSTONES THROW、DEF JUXなどは日本での知名度も高いし、露出もある。CD-Rで作品を出しているアーティストなんかとは同列で語れなくなっている。でも、そこをあえて全部同じように取り上げていきたいんですよ、メジャーレーベルの作品も含めて。ただ、自分のお店で売る作品となると、他では手に入り難い作品に限定されちゃいますけど。 |
| 微熱王子 |
メジャーや準メジャー、インディペンデント、CD-Rしか出していないようなドマイナーなヒップホップを同列に扱っていく、という所は非常に難しいことだと思います。なんだかんだ言っても、みんな偏見は持ってますから。勿論、私も。FUMA75さんにも絶対あると思いますし。で、そこを敢えて提示していく為には、自分の偏見を先ず崩していかなくてはいけないですからね。 失礼ながら、私はいまもFUMA75さんのSHOPについては、ボランティア的な採算度外視な印象は持っていて、その中であくまでSHOPとは絡めないリベラルなレビューを書いたり、日本にはまだ広まっていない細かくて専門誌も取り上げないようなマイナーなニュースやトピックを探し出して、それを取り上げたり...、良い作品広めていく為に、全部自分ひとりの力で成し遂げていくスタンスはとても尊敬しています。 で、CD-Rの話が出てきた?ので、そこから強引に話をつなげると、パソコンさえあればテープを作るより楽なCD-Rという媒体が巷に爆発的に出回ったのもこの辺の時期ですね。他のジャンルは良く知らないうえでいってしまうんだけど、アンダーグランドHIPHOPが一番早くCD-Rを商品として扱ったんじゃなかろうか。 一番売れたCD-R商品は、SAGE FRANCISの"STILL SICK"あたりになるんでしょうか?CD-R商品はPUT EM ON THE MAPでもSHOP開設当初からたくさん扱ってきたと思うんですけど、アーティストやリスナーから見たときの「手軽さ」という意味では、シーンの活性化に一役買いましたよね?まぁこのCD-Rという物自体が雑誌媒体で扱いづらかったという側面もあったんでしょうけど、逆にCD-Rは、ネットというか、パソコンとすこぶる相性が良い感じがします。ネット通販なんかで買う時に、「CD-Rを買う」という行為に違和感はあまり感じさせない。店でCDを買う感覚とはやっぱり多少印象が違うと思います。そう考えると、ネットと「CD-R」という新媒体をアーティストとリスナーが上手く「手軽」に機能できていた時期なんじゃないかな。で、そんな時期を過ごすことが出来たアンダーグランドHIPHOPは、そういう音楽とは別の機能的なところでもやはり先端を行っていたんじゃないかとは思っています。 |
| FUMA75 |
CD-R最大のメリットは、録音してすぐ出せるという点でしょう。極端な話、ベッドルームで録音してから日本のリスナーの手に届くまでに一ヶ月かからないなんて事も可能ですからね。アーティストとリスナーのコミュニケーションという側面がヒップホップは他のジャンルと比べて大きいですから、タイムラグを極力減らせるCD-Rの有効性は明らかですよね。勿論、望んでCD-Rで出してる訳じゃなく、経済的理由でそうせざるを得ないのは分かっているんですが。 それに、CD-Rはアーティストとリスナーの距離をあまり感じさせない媒体ですよね。どこか、音楽をやってる友達に「アルバム作ったから聴いてよ」って感じで手渡されてるような感覚。SAGEの"STILL SICK"にしても、今出回っているのはプロフェッショナル・プレスですけど、初期のCD-RヴァージョンにはSAGE本人のイラストとサインが入ってたし、ジャケもカラーコピーで手で切ってるから大きさもマチマチだったりして。音質の悪さとかも良い意味でダイナミックさを生んでいて、いかにもヒップホップらしい。 容易に自分の音楽を流通させられるという事は、反面、自慰以外の何物でもない安易な音楽が氾濫するというデメリットもあるんですけど、とんでもなく実験的で刺激的な音楽が世に出る切っ掛けになるという事でもある。そういう意味では、今後はリスナーの責任が大きくなっていくでしょうね。途中にフィルターがないわけですから。 |
| 微熱王子 |
その現象はもう既に起こっているんじゃないかな、と思いますけどね。CD-Rでのインスタントな作品が出回り始めて、品質云々以前に需要と供給のバランスが崩れてきたかな?と個人的に思ってきたのが2003年。ずっと前からアンダーグランドを見てた人はもっと前にそう思っていたのかもしれないですけど。で、やはりその矢先にHHIが閉鎖したんで、これはもう決定的かな、と。ひとつのデカイ指標がなくなったというだけではなくて、需要と供給のバランスが崩れてしまったことを指し示していた。 そんな中、リスナー個人個人が良い作品を聴き分けていく、というのはすごく難しい気がします。膨大な作品の中から、自分が良いと思った作品をピックアップしていく、という作業は時間とお金の面でも相当のアングラ・フリークじゃないと出来ない所業だと思うし...。そこの部分で、良質な作品が一部の人の目にしか触れず埋もれていってしまうってことは流れから言ってもある意味必然なのかもしれません。 同時に2003年辺りになると、私はアンチナードな空気も感じていて(笑)。その引き金の一つはJAY-ZやNAS、KANYEやJUST BLAZE、LIL JONやNEPTUNESやTIMBALANDなんかのメインストリーム側の活躍だったりするんでしょうけど、やっぱり「FUCK NERD」なんて言葉が出ること自体、相当シーンにオタク野郎比重が高まっていたと思うんですよ。「アンダーグランドヒップホップ」ではなくて「ナードラップ」という視点で見たとき、その流れをFUMA75さんはどう見てました? |
| FUMA75 |
元々、アメリカ社会のメンタリティが反ナードですからね。オタクが迫害を受けるのはどの世界でも一緒というか(笑)。ヒップホップ・シーンでオタクの比重が高まった要因は、やっぱりANTICONに行き着くと思うんですが。彼らが、ヒップホップは好きだけど、従来のシーンには居場所のなかった白人のオタク達に安住の地を与えた、とでも言うか。叩かれるという事は、そうした表現方法が市民権を得た証拠でもありますしね。 ただ、「ナード・ラップ」の定義というのが今一つ釈然としないんですよね...。個人的には、「リスナーとのコミュニケーションを放棄した表現」と感じているんですが、どうでしょう? |
| 微熱王子 |
う〜ん。個人的には、ラップが白人臭いぬっぺらした声とフロウで、音がエレクトロニカやDJ PREMIERの音を薄めた作りなようなもの、欲を言えばカナダっぽい音、だったら無責任に「ナードラップだ!」と思っていますが(笑)。あからさまにキモイフロウや音で勝負しているようなものとか...。 「リスナーとのコミュニケーションを放棄した表現」って考え方は面白いですね。銃や金や女について語るようなもんじゃないことは確かですし。例とかって具体的なイメージあります?こいつはナードラップだ!みたいな。 |
| FUMA75 | 私も同じような認識でしたよ。なんとなく「ナードラップだな、これは」みたいな。やっぱりEPICとかFACTOR周辺ですかね、いかにもな感じと言うと。あと、DISFLEX6周辺とかもそうかも。オタクっぽいアーティストは昔からいたんですけどね。PRINCE PAULやDE LA SOULとか。ただ、ナードと言うと白人のイメージがありますけど、ギャングスタラップとかと同じで明確な定義なんてないんでしょうね。 |
| 微熱王子 |
「ナードラップ」って言葉自体、この1,2年で出来たようなもんですしね。敢えて定義するとして、一番わかりやすいのは、FUMA75さんが言うようにANTICON以降の影響を受けたアーティストでしょうね。ギャングスタ・ラップがNWA以降の感じで。そう考えると、やっぱりかなり偉大だな...ANTICON。ヒップホップの層の幅を広げた訳だし。 FACTOR周辺やDISFLEX6周辺は支持層からしてナードが多そうですね。自分を含めて。支持層がナードだったら「ナードラップ」ってのもアリかもしらん。極めてどーでもいいですけど。2003年でいえば、THE WEATHERやBLEUBIRDとかにも象徴的。同時にこの年に9TH WONDERをキッカケとしてリミックス・アルバム・ブームも勃発する訳ですが、この辺もオタク・プロデューサーがたくさん頑張って作っていたような...。 |
| FUMA75 |
ギャングスタ・ラップがNWA以前にも存在していたように(SCHOOLY D、ICE T、KOOL G RAPなどなど)、ナードラップもANTICON以前に存在していたんでしょうけど、NWA同様、ANTICONがナードラップを一般的にしたと言って良いでしょうね。プロデューサーやDJにはオタクが多いという印象があります。やはり、家に篭りがちな職業だけにオタク気質じゃないと務まらないのかも知れませんが。ここ2、3年の自主制作シーン最大の収穫はナードラップにあり、というところでしょうか(笑)。 今後、ナードラップは商業的にも大きくなる可能性はあると思っているんですが、どうでしょう?と言うのも、初期のEMINEM作品はナードラップ色が非常に強かったと思うんですよね。彼があそこまで成功したのもありますし(ビジュアルや後ろ盾も大きな要因ですけど)、これまでアンダーグラウンドで起きたムーブメントは全てと言って良いほどメインストリームに浮上しているんですよね。だから、この先MTVでいわゆるナードラップがヘビーローテーションされる日も遠くないんじゃないかと。 |
| 微熱王子 |
EMINEMは初期の支持層からしてヲタが多そうだしなぁ。EMINEMだけでなく、ATMOSPHEREとかもロック・リスナーにウケているのを見ると、確かにナードラップが一般認知される日も近いのかもしれません。果たしてEMINEMやATMOSPHEREがナードラップなのか?という論議はあるでしょうけど、ナードラップという定義とは別としても、田中宗一郎氏の"SEVEN'S TRAVELS"(@THE ESSENTIAL DISC GUIDE 2004)の評に詳しいように、「内省的、私小説的なヒップホップ」が、今までの「ユースカルチャーとして磨耗されつつあるヒップホップ」の中から半ば必然的にうまれて、一般的な地位を確立しつつあるという意見には、とても共感できる。 そういう意味では、今後いわゆる「内省的なラップ」(≒ナードラップ)はどんどん増えて、その中でも良質な作品は世の中に広まっていくでしょうね。あと、「内省的なラップ」という話になると、例えば2004年のKANYEのアルバムとかにも象徴的ですけど、メインストリーム・ヒップホップについても、2003-2004年を境に大きな変革を遂げている気がしています。それは現在のアメリカ内にある社会不安とかの要素とかも絡んでくる話になるのでしょうけど。 |
| FUMA75 |
2004年は、メインストリームで言えば、KANYE WESTとG-UNITが席巻した年でしたね。あとは、LIL JONとかでしょうか。 インディペンデント・シーンとなると、振り返った時にこれといった大きな動きがなかったかな、というのが第一印象ですね。数年前のように、DEF JUXやATICONはもとより、MUSHだったりPEANUTS & CORNだったり、GALAPAGOS4だったり、レーベル単位でシーンを担う存在が出てきたりしていた時期と比べると、今年は地味だった気がします。PSYCHO + LOGICALが良作を立て続けに出してましたが、シーンに影響を及ぼすほどではないし...。インパクトのある大型新人の存在もなかった。とはいえ、作品毎では豊作でした。西海岸勢は頑張ってましたね。MADLIBは相変わらず好調だったし、THE SHAPE SHIFTERSは各メンバーのソロ作も含め精力的だった。今年は、今までこの対談で名前の挙がった、実績のあるアーティストがその実績に見合った良作を多く出した年という事でしょうか。 |
| 微熱王子 |
MADLIBやDOOMさんはここ最近すごい働いてますね。精力的にコラボしたり。2003年で言えば、IMMORTAL TECHNIQUEやBLEUBIRDが注目を浴びたりはしてたけど、2004年はニューフェイスですごい注目を受けた人は確かに思い当たりませんね。一応LIGHTHEADEDからのソロデビューで、BRAILLEあたりになるのかなぁ。...地味すぎる。ニューフェイスじゃないけど、QWEL & MAKERやNOBSなんかも頑張っていた印象があるな。PUT EM ON THE MAPで今年一番売れたところはどの辺なんでしょうか?やっぱりILLOGICとかMADVILLAINとかでしょうか。あと、FUMA75さん的にはどの辺が良かったですか?個人的に2004年に良い印象はないんですが...。 |
| FUMA75 |
BRAILLEは実はLIGHTHEADEDの前にソロ・アルバムを出しているんですよね。CD-Rで。よく売れたのは、PLAGUE LANGUAGE "FAREWELL ARCHETYPES"やCESCHI "FAKE FLOWERS"、NOAH 23の2枚といった所でしょうか。ILLOGICは結構売れましたけど、MADVILLAINは今一つでしたね。何処でも買える商品は、基本的にある程度しか売れないんですよ。 今年は印象的な作品は確かに少なかったですね。良作はいつものように多かったんですけど、インパクトに欠けていたと言うか。パッと思いつくのはMADVILLAINぐらいですかねぇ。THE SHAPE SHIFTERSの"WAS HERE"なんてかなりの良作だと思うんですけど、彼らは色々出しすぎたせいでインパクトが薄まった感があるな、と。あとは、ILLOGIC "CELESTIAL CLOCKWORK"、C-RAYZ WALZ "BLACK SAMURAI EP"などは良く聴きましたね。年末だからという訳じゃないんでしょうけど、TOCAとCESCHIは個人的に今年のベストに入る出来かと思ってます。 |
| 微熱王子 |
BRAILLE、過去に出していたんですか?知らなかったです。LIGHTHEADEDやLITTLE BROTHERに限らず、SWEATSHOP UNIONやATHLETIC MIC LEAGUEみたいな集団ラップクルーからもソロで活躍するアーティストはこの先も出てくるんでしょうか。結構、この辺のカレッジ風ラップは好きだったですよねぇ。 THE SHAPE SHIFTERSは、過去音源に比べるとかなり丸くなったというか、聴きやすくなりましたよね。あと、TOCAとかCESCHI、PLAGUE LANGUAGE周辺が売れているってところに、なんかPUT EM ON THE MAPのリスナーのセンスを感じます(笑)。私も、今年のアンダーグランドヒップホップで魅力を感じるのは、この辺になりますね。 で、C-RAYZ WALZは全くノーマークでした......というかDEF JUXのパート3を聴いて、現在のDEF JUXの方向性を確認してから、あまりDEF JUXはチェックしていなかったんですけど、C-RAYZ WALZ、そんなに良いのですか?他のDEF JUX作品とか、またANTICON作品とか聴いてどう思いました? |
| FUMA75 |
SWEATSHOP UNIONやATHLETIC MIC LEAGUEのような、集団でこそ映えるグループからソロ作を出しても難しいような気もしますけどねぇ。あの辺は、大学の寮かなんかで皆で集まってワイワイやってる感が良いですよね。 C-RAYZは、完全に個人的な好みですね。声も好きだし、フロウも癖になるというか。ハードなブレイク・ビーツにストイックなライミングっていう、昔ながらのヒップホップがやっぱり好きですから。最近のDEF JUXはそういう方向に向ってますよね。エレクトロニカ勢と絡んだり、ジャズやったりしても、あくまでそれは課外授業であって、そういう要素をストイックなヒップホップに取り込もうと言う意思はあまり感じない。ANTICONはそれと正反対で、色んな方向に放浪しているような感じというか。ただ、ヒップホップからは離れていってるようでいて、根っこにはヒップホップの血が流れているし、ヒップホップを通過した音というより、どんな事をやっても、常にヒップホップをチラ見せずにいられない感が音に出ている。音は全く違いますけど、ANTICONのやってる事はMOS DEFと変わらないんじゃないかと思います。バックグラウンドが違うだけで。 |
| 微熱王子 |
FUMA75さんのMOS DEF評に書かれていた「COMMONやOUTKASTが様々な方向から”取り込んだ”のに対し、MOS DEFは自ら”外に出て行った”」という点について考えると、ANTICONも確かにその通りで、「俺達のジャンルは"HIPHOP"じゃなくて"ANTICON"だ」というスタンスにも表れているように、HIPHOPをベースとしつつ、どこまで逸脱できるか・枠を広げられるか、というところを活動の肝としている感は確かにある。
このところのANTICONで凄いなと感心するのは、「枠を広げる」という意味において、必ず前作より前進しているところですね。
基本に立ち返って、前作より刺激が薄まるということは、まず無い。私がANTICON作品を聴くときに先ず意識するのはソコで、今までより「新しい」かどうか。他のANTICONアーティストと比べてどうか?という点。寧ろANTICON作品を評価する上で、彼らの意識を考えても、その軸で評価することが一番正しいんじゃないかとも思います。 で、私はDEF JUXについて思う部分は一部FUMA75さんと同じだけど、一部違う。DEF JUXは、かなり微量ずつにだけど「COMMONやOUTKAST」と同じで色んな要素を”取り込”みに入っていると思っていて、それが「歪」な形で作品にあらわれたのが"DEFINITIVE JUX PRESENTS V"だろうと。例えそうじゃなくても、真っ当なHIPHOPを作ろうとしたときにああいう歪な作品が一時代を牽引したレーベルの作品として出てくる時点で、何か意識的なものを感じるんですが…。 |
| FUMA75 |
なるほど。ただ、"FUNCLASHER PLUS"も、彼らにとっては「普通のヒップホップ」をやろうとしただけ(勿論、彼らの言葉を鵜呑みにすればですが)とのことだし、彼らにとっての普通が、我々にとって歪んで聴こえる面が大きいんじゃないかと思っていたんですよね。だからこそ、余計に面白いというか。あと、ANTICONにしてもDEF JUXにしても、新しい音を常に鳴らすというのには限界があると思うんですよね、やっぱり。 だからといって、エレクトロニカをやったりポストロックをやったりしても、それが進化とは思えませんし、むしろ保守的ですらあるんじゃないかと思うので、今後この2つのレーベルがどういった作品をリリースしていくのか、非常に興味深いですね。 |
| 微熱王子 |
忘れてたんですけど、MURS & 9TH WONDERも2004年なんですよね。で、DEF JUX作品。あれだけど真ん中、というか「主流」の作品がDEF JUXから出ているのも少し違和感があるんですけど、MURS & 9TH WONDERだけ置いてDEF JUXの主軸がズレてしまったように見えるところが個人的にすごいオモロいんですよね。(そこの転換のキーとなった作品は、PARTY FUN ACTION COMMITTEEだと思ってはいるんですが。)だから、そういう意味では2004年のDEF JUX作品は今までのDEF JUXの「ドープかつ安定かつ革新的」みたいなところを期待してしまったから、期待はずれになってしまったけど、来年以降のDEF JUXカラーがどう転がっていくか、という点は見方によってはすごい楽しめる気がします。果たして「MURS & 9TH WONDER寄り」に行くのか?「PARTY FUN ACTION COMMITTEE寄り」に行くのか? あと2005年以降は特に、FUMA75さんが言うように、「新しい音」へのアプローチ、「限界への挑戦」が今後どれだけ試されるか?ってところに「アンダーグラウンド」の真価が問われる気がします。やっぱり「メインストリームへのカウンター」という部分は、めっきり弱くなってしまったし。それは現在のメインストリームがそれほど質が良いということの裏返しだと思うので、一概に「駄目だ」と言える所でもないですしね。 逆にどれだけ現在の「アンダーグラウンドへのカウンター」になりえるのかってところがこれからの「革新性」につながっていくんじゃないかなぁと思ったりしています。FUMA75さんが言うように単純に「エレクトロニカをやったりポストロックをやったり」するのではなくて、どれだけ自虐的になれるか?開き直れるか?という部分が重要なんじゃないかな、と。すごい厭な言い方ですが。 |
| FUMA75 |
個人的には、ある種神格化されつつあったDEF JUXという存在を否定したかったんじゃないかと捉えてますけど。ファンを試すと言うと聞こえが悪いですけど、「革新」の部分だけに付いて来たリスナーを振り落とす行為。様々なスタイルのヒップホップを網羅しつつ小馬鹿にしたPARTY FUN ACTION COMMITTEEはその象徴的な意味合いがある。簡潔に言うと、小難しい印象を変えたかったんじゃないかと思うんですよ。シンプルな「良い音楽」を出している事には間違いないんですけど、物足りなさを覚える人がいても不思議じゃない。そういった意味でも、今のDEF JUXの立ち居地というのは面白いと思ってますけども。ANTICONのようにぶっ飛んだ事をする余白を残しつつも、オーソドックスなヒップホップを出している。幅広い音楽性を手に入れた印象がありますね。柔軟になったと言うか。EL-Pの不振と引き換えに、と言ったら言い過ぎかもしれませんが。 最後に、2005年にどんな期待をしてますか?個人的には、2003年末も同じような事を言ってたような気もしますけど、ずば抜けた新人の登場に期待してます。 |
| 微熱王子 |
2005年はアンダーグラウンドとは少し離れてしまうかもしれないけど、GRIMEがアメリカのシーンにどういう影響を与えるのかがとても興味があります。なんだか、LETHAL BIZZLE(from MORE FIRE CREW)の曲が南部ですごいウケてるという噂もありますし。南部のスノビッシュな人たちにどう解釈されるのかな?と。もっと個人的な話でいけば、GRIMEにも注入されてるメタルのサンプリングに興味がありますね。以前にもメタルサンプリングはけっこうやられてるみたいですけど、聴いてるともっと面白い音が作れそうな気がするんですよねー。全くやられないかもしんないけど(笑)。 アーティスト単位でいくと、TONE DEFFとか、IMMORTAL TECHNIQUEあたりが楽しみかなぁ。噂のJEAN GRAEも。普通の意見になってしまうけど、9TH WONDERがこれからどう展開していくのか楽しみですね。 ...さてさて、そんなこんなで本当に長々と対談をしてまいりましたが、そろそろ一区切りということで、ここらで一旦締めましょうか。 |
| FUMA75 |
GRIMEの事は良く分からないんですよね...なかなか聴く機会がなくて。JANE GRAEやIMMORTAL TECHNIQUEは私も期待しています。大きなムーブメントよりも、そうしたソロMCの動向が面白くなりそうですね。 大変興味深い対談が出来ました。長い間お付き合いくださってありがとうございました。 |
| 微熱王子 |
いえいえ、こちらこそとても楽しかったです。はじめに意図していたところより微妙に偏った内容の対談になってしまったかもしれないですけど、その分いろんな分野に関して、FUMA75さんの意見が聞けて興味深かったです。 また、別のテーマで対談できれば嬉しいです。ありがとうございました。 |
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(1.2005)
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