LP/EP BLAZING ARROW : NIA : A2G



BLAZING ARROW

Label: MCA (2002)

Artist: BLACKALICIOUS

Production: Chief Xcel, ?uestlove, Hi-Tek, Cut Chemist, Ben Harper, The Innocent


1. Bow And Fire: The Introduction
2. Blazing Arrow
3. The Sky Is Falling
4. First In Flight w/Gill Scott-Heron
5. Green Light
6. 4000 Miles w/Chali 2NA of Jurassic 5, Lateef
7. Nowhere Fast
8. Paragraph President
9. It's Going Down w/Lateef, Keke Wyatt
10. Make You Feel That Way
11. Brain Washers w/Ben Harper
12. Chemical Calisthenics w/Cut Chemist of Jurassic 5
13. Aural Pleasure w/Jaguar Wright
14. Passion w/Rakaa & Babu of Dilated Peoples
15. Purest Love
16. Release w/Saul Williams, Lyrics Born
17. Day One

BLACKALICIOUS、MCAに移籍しての待望の新作だ。ソウル/ファンク色の強いCHIEF XCELのトラック、ポジティヴで意識の高いGIFT OF GABのライム。前作に於いて確立されたこうした方向性と高い音楽性は、本作で更に推し進められている。

GIFT OF GABの成長振りがまずは聴き所だ。冒頭から凄まじいライム・ストラクチャーを聴かせる"BLAZING ARROW"、ワックMCを焼き尽くす"PARAGRAPH PRESIDENT"、CUT CHEMIST操るドラム・ブレイクをGIFT OF GABが凄まじいフロウで見事に乗りこなす"CHEMICAL CALISTHENICS"などでマイク・スキルをストレートに披露。ポジティヴな"GREEN LIGHT"、ラヴ・ソング"NOWHERE FAST"、ノスタルジックな"MAKE YOU FEEL THAT WAY"、権力批判を繰り広げる"BRAIN WASHERS"、RAKAAとGIFT OF GABが熱く語り合う"PASSION"辺りは真骨頂。フロウの幅も広がっているし、味わい深い。

CHIEF XCELが手掛けるサウンド面だが、今作では生楽器を多用し、ネオ・クラシック・ソウル的な肌触り。基本的な路線に変化はないものの、随分と可愛らしい"BLAZING ARROW"、やたら大袈裟な"THE SKY IS FALLING"の2曲は新機軸を感じさせる出来。全編を一貫して貫くファンキーな音像は、前作から確実な進化。曲構成もより凝っていて、唸らされる。

本作が前作と大きく違う点を挙げるとすれば、外部からのゲストが多数参加している点だろう。個人的には、SAUL WILLIAMSが参加した大作"RELEASE"に注目したい。人間性をディープに表現した内容も彼ららしいし、素晴らしいポエトリー・リーディングを披露するSAUL WILLIAMSの存在感には圧倒される。間違いなくハイライトだ。ただ、期待していた元RAGE AGAINST THE MACHINEのフロント・マン、ZACK DE LA ROCHAの参加はガヤ程度のモノで、これは少しガッカリ。

生楽器の比重が増し洗練された印象が強くなったため、前作にあった土臭さが希薄になった点は寂しいが、彼らの音楽に迷いは無い。前作には及ばないものの、素晴らしいアルバムになっている。お勧めだ。



NIA

Label: QUANNUM (2000)

Artist: BLACKALICIOUS

Production: Chief Xl, Dj Shadow


1. Searching
2. The Fabulous Ones
3. Do This My Way w/Lyrics Born
4. Deception
5. A To G
6. Cliff Hanger
7. Shallow Days
8. Ego Trip By Nikki Giovanni
9. You Didn't Know That Though
10. If I May w/Lateef
11. Dream Seasons
12. Trouble (eve of distruction)
13. Smithzonian Institute Of Rhyme w/Lateef
14. As The World Turns
15. Reanimation
16. Beyonder
17. Making Progress
18. Sleep
19. Finding
DJ SHADOWのレーベル、QUANNUMのBLACKALICIOUSは、ラッパーのGIFT OF GABとDJ/トラックメイカーの CHIEF XCELの2人組。

まずは、美しいフルートに耳を奪われるイントロ、"SEARCHING"から、ファンキーな"THE FABULOUS ONES"、レーベルメイトのLYRIC BORNがいつものフリーキーなフロウを聞かせる"DO THIS MY WAY"までの流れが素晴らしく、CISCOという名のラッパーの物語を通して音楽業界を斬る"DECEPTION"のサビは、ここ数年で最高だろう。タイトル通り、AからGまでの頭文字で始まる単語での言葉遊びを、ドープなピアノ・ループ上で繰り広げる"A TO G"を聞き終わる頃には、このアルバムが只者でない予感は確信へと変わってくる。DJ SHADOWが、透明感のあるレトロかつ独創的な(特に後半の展開!)トラックを提供した"CLIFF HANGER"、"SHALLOW DAYS"では、所謂ギャングスタ・ラップとコンシャス・ラップについて対話形式でライム、自分に正直であれ、と歌う。サビを歌うERINN ANOVA(彼女はこのアルバム以外でも、QUANNUM周辺の作品に度々参加しているが、要注目のヴォーカリストだ)に素晴らしいギターループが、その辺の”R&B系”のヒップホップとの違いを見せ付ける"IF I MAY"、恐ろしくドープなバトル・ライム"TROUBLE"はラストのスクラッチも最高。再びLATEEFが登場するルードな"SMITHZONIAN INSTITUTE OF RHYME"は、2人の柔軟なデリヴァリーに言葉を失うし、CHIEF XCELのソウルフルでファンキーな素質が爆発する"AS THE WORLD TURNS"に至っては、何も言わずにそのグルーヴに酔いしれて欲しい。ファンキーな"REANIMATION"で現実に連れ戻された後は、勢いと深さを併せ持つようなトラックがドープな"BEYONDER"、ピアノが美しすぎる"SLEEP"で又も遠くへ連れて行かれる。そして"FINDING"の、これまた素晴らしいギターループでアルバムは幕を閉じるが、初めてこのアルバムを聴いた人は、俺がしたように再び再生ボタンを押す事だろう。

ヒップホップが好きでよかった、と思わせてくれるアルバムに出会う事は本当に稀だが、これはそんなアルバムだ。イントロからアウトロまで、トラックにライム、コンセプト、構成、全ての面で最高峰のクオリティを誇っている。特に曲順の練られ具合は特筆モノで、一度再生を押したら最後、気付くとアウトロまで聴いてしまう程。

もう、何も言わずにただ聴いて欲しい。ヒップホップの魅力を全て詰め込んだ必聴のアルバムだ。



A2G

Label: QUANNUM (1999)

Artist: BLACKALICIOUS

Production: Chief Xcel, Cut Chemist


1. A To G
2. Clockwork
3. Rock The Spot
4. Back To The Essence w/Lateef
5. Deception
6. Making Progress
7. Alphabet Aerobics (the cut chemist 21/2 minute workout)
QUANNUMというと、やはりDJ SHADOWが注目を一手に集めてしまうが、彼以外のアーティスト達も一筋縄ではいかぬ強者ばかり。GIFT OF GABとCHIEF XCELのコンビBLACKALICIOUSは、練られたビートとライムでピュアなヒップホップを聴かせてくれる。

このEPで注目すべきなのは、"A TO G"と"ALPHABET AEROBICS"の2曲。アルファベットでの言葉遊びのなかにメッセージを巧みに盛り込んでいるという意味で、ずば抜けた完成度を誇るこの2曲は、GIFT OF GABのMCとしてのポテンシャルの高さを如実に物語っている。特に、BPMが徐々に速くなる後者でのライム・フロウは凄まじく、最早人間業ではない。ドープ!

一人のMCが成り上がり、落ちてゆく様を描写した"DECEPTION"、全ての黒人に向けたポジティヴ・メッセージ"MAKING PROGRESS"もリリシストGIFT OF GABココにあり、といった感じだ。オールドスクール色の強い中盤のパーティーアンセム3曲も最高だ。"BACK TO THE ESSENCE"は、レーベル・メイトLATYRXのLATEEFとのマイク・リレー。ドープ。

多くのEPと言うのは、トピックの幅が狭くなってしまいがちだが、彼らにそれは無いようだ。CHIEF XCEL手掛ける土臭いファンク・トラックもドープだし、GIFT OF GABに関しては何も言うまい。30分に満たない長さだが、満足度は余りあるほど。